今回はGainerという仕組みを実習しました.Gainerはブレッドボードを利用することで比較的簡単に回路を組んで,I/Oを実現することができるというモジュールです.これにより期待できることの1つとして,フィジカルコンピューティングが挙げられます.フィジカルコンピューティングとは,人とコンピュータとのやりとり・コミュニケーション・インタラクションを考える領域で,例えばキーボードとマウスに限定しない入力を実現することで,人の自然な振る舞いをコンピュータの操作に結びつけるようなことを目指しています.GainerにはAnalog In,Digital Inが両方ともサポートされているため,さまざまなセンサーを入力に使うことができます.これによりさまざまな状況をセンサーを介して評価し,それをGainerがコンピュータに渡すことで特殊な入力を実現することが可能になるという訳です.

さて,ではこんなことしてまでなぜフィジカルコンピューティングってのを今考えてみようとするのでしょうか.ひとつに,身体感覚ということが挙げられるかと思います.みなさん理科の授業で地層習いましたよね.なので知識はあるかと思います.あるいは,理科の教材が充実していれば図やイラストだけではなくて写真が,しかもカラーで載っていたりするといいですね.でも,先日の地層ワークショップで見て触った実際の土や砂,それらが積もってできた地層はもっとよかったと思います.土や砂は思ったよりサラサラしていたりベトベトしていたりするし,あんな細かいのが積もりに積もってできた地層は自分たちよりもはるかに大きなものでした.そういう,写真やテキストからでは吸い上げられない情報って結構たくさんあると思います.そういう情報の中から,コンピュータによる動的なコンテンツであったりキーボードやマウスではない入力をユーザの身体感覚に近づけることで理解支援に繋げていくことが,フィジカルコンピューティングを活用するということではないでしょうか.
2
もちろん,例えば地層の大きさといったスケールを実感するにはフィールドワークが最高の方法だということは間違いありません.砂や土の手触りも本物以上の素材は無いでしょう.ですが,一方でフィールドワークの現場はただ環境があるだけです.そこには説明も体系も用意されていません.環境全体からそれなりの理解体系を築きあげることは不可能ではないですが,それは現実的な時間では無理でしょう.なので,教科書や図版といったものから得られる俯瞰した知識(従来型の学習)と,それを現実の環境や実体験(フィールドワーク)とを繋げられるような仕組みが今回みなさんがデザインするコンテンツに求められているということなのです.これは栗芝先生が初回の授業のスライドで提示してくださっていますね.
3
もちろん,環境とのコミュニケーション全てがフィジカルコンピューティングで代用することができるということではないので,どの要素が身体感覚に近づけられるかといった議論が必要になります.また,フィジカルコンピューティングとはGainerを使わなければ実現できないことでもないので,工夫によっては別の手段(より機械的であれより電気的であれ)を検討することもできます.そこはみなさんの作るコンテンツ次第ですね.
4
今回はOBの安井先輩が来てくれました.彼もまたフィジカルコンピューティングを入り口にしてコンピュータと人との関わり方を大学で考え続け,素晴らしいことに界隈の業界で仕事を得ている人です.Gainerは彼にとても身近ですし,最新の情報をフォローしているので,彼とコミュニケーションを取ればみなさんの助けになってくれるでしょう.数年前にはSAとしてこの授業手伝ってくれていますし,その前には受講生としてみなさんのように参加してきているので,安井先輩とは長い付き合いですし,長く助けてもらっています.今年もよろしくお願いしますw
5
0 件のコメント:
コメントを投稿