2011年10月30日日曜日

CD応用演習2011#05 グループディスカッションとプロトタイプ製作

こんにちは,たろぐです.

今回からディスカッションと並行してプロトタイプ製作に入りました.考えているだけでは分からないことや詰められないことというのはたくさんあるので,手を動かして作ったり壊したりしながら議論を深めていこうというのが目的です.


プロトタイプ製作は,
  • 綺麗に作らない(でも丁寧に作る)
  • ガワと仕組みを分けて考える
  • 確認すべきポイントに沿って試作したものをよく観察する
というのが,個人的に重要なことではないかと考えています.



1.綺麗に作らない(でも丁寧に作る)
プロトタイプ製作は基本的に作っては壊しを前提としています.そこで知りたいのは,作ろうとしているプロダクトのざっくりとした大きさや見た目,使いやすさや挙動といったものです.なので,大きさがおかしかったら作り直し,形がおかしかったら作り直し,挙動がおかしかったら差し替え(作り直し).とにかく作り直すために作る,壊すために作る,みたいなプロセスを通るのがプロトタイプ製作を効率よくよりよい成果を上げるために必要なことですので,"壊しやすい"ものを作るのがいいのです.綺麗に作ろうとすると作るのに時間がかかりますよね.そして頑張って作ったものがちょっと変でも頑張って綺麗に作ったのでもったいないと思ってこれでいいかなとか妥協したくなりますよね.そう思ってしまうのは当然なのでそれを悪いとは云いませんが,プロトタイプ製作によって確認したいことができなくなってしまうのは本末転倒.だから,そもそも綺麗に作らないことでそういった感情に流されてしまうのを事前に回避しようというわけです.
でも,(でも丁寧に作る).前期のインタラクションデザイン基礎演習でも最初から「丁寧」ということを何度も求めてきたと思います(ixd*2011 |インタラクションデザイン基礎演習|第1回|空間思考と手のスキル).綺麗じゃなくてもいいですが,丁寧に作らないと確認したいことがなんとなくで終わってしまう可能性があります.最初の段階ではかなり抽象的なイメージから作っていくプロトタイプも,徐々に詰めていく段階では仕組みや挙動といった本製作に仕様を渡せるようにしておくべき箇所も出てきます.そういった所では確認すべきものの精度をきちんと確認できるように丁寧に作ることも必要です.もちろん全部が全部をとやっていたら時間がとてもかかりますので,丁寧に確認すべき箇所を自分たちで自覚してそこを丁寧に作るといった判断が大事になってくると思います.



2.ガワと仕組みを分けて考える
これは主にモデルに仕掛けを組み込むグループが対象なのですが,外観や大きさ,素材といったガワをどう作るのかという議論と,大きさに関わらず組み込む予定の仕掛けセンサーといった動的な仕組みをどう実現していくのかという議論を分けて考えた方がいいと思います.特に後者の仕掛けやセンサーについては早い段階で実験して試行錯誤できるような準備をしておき,それが期待した動きをしてくれるのを確認してからモデルに組み込む方法を考えないと,場合によっては仕組みそのものを差し替える必要が出てきて全体の構成を大きく変えることになりかねないので,少なくとも並行してプロトタイプを製作して欲しいと思います.



3.確認すべきポイントに沿って試作したものをよく観察する
上記のことを進めていくと,今自分たちが試作しているプロトタイプは目標としているプロダクトのどの部分を確認するために作っているのかが明らかにできると思います.そうしたらやることはひとつですね.そう,よく観察してイメージどおりにできそうか,ちゃんと動くか,といったことを確認してください.この段階で新たに必要だと思われることや逆に不要だと思われることはたくさん出てくると思います.そうしたらまたそれをどう判断するかを議論して,プロトタイプから読み取れる完成像のイメージをよりよいものにしていってもらえればと思います.



これは僕の担当の班の学生に云ったアドバイスですが,アイデアはたくさんあった方が絶対にいいです.もちろん,たくさんアイデアを出せば死にアイデアが山のように出ます.死にアイデアを出してしまうことに対する抵抗感はもちろん僕にもありますので分かりますが,死にアイデアを出さずにいいアイデアに辿り着くことは非常に困難,あるいは不可能です.死にアイデアなしの状態はアイデアの死体がないですが平地に立っているようなものです.ですが,山のような死にアイデアを出せば,アイデアの死体の山の上に立っているような状態ですよね.もちろん,そっちの方が平地よりも高い所に立っているってことです.しかも,その時は死にアイデアだと思っていたものがある瞬間に活きたアイデアになったりもします.それも結構頻繁に.
みなさんもどんどんアイデアを出して,その先にいいものを生み出す気概で議論をしていきましょう.



最後になりましたが,今回も先輩が来てくれてアドバイス等々してくださいました.多謝!


2011年10月29日土曜日

てすと

bloggerAppを導入してみました.
写真はiPhoneのカメラロールからしか載せられないので授業風景載せられないですが,とりあえず文章は移動中にも考えたりできるようになりました.
これが幸せなことなのかは僕にも分かりません…

2011年10月24日月曜日

CD応用演習2011#04 シャッフルディスカッション

こんばんは,たろぐです.

今回はシャッフルディスカッションをしました.各グループで現時点での企画を一度まとめてもらい,それをほかのグループに見てもらうことで問題点の指摘やいい点の評価などをもらうことが目的です.


結果論的で身も蓋もないことを云いますが,この時点でみなさんが企画として組んでいるものが最終案としてそのまま使えるなんてことはあり得ません.既にシャッフルディスカッションを終えてみなさんには痛いほど分かっていると思いますが,ちょっと話し合った程度で出てきたアイデアは常識的に考えて穴だらけです.それを叩いては壊し,また組んでは叩いて壊しをやることでいいものに磨き上げていくのがアイデアだと思ってください.それは天から降ってくるものではありませんし,いきなり生み出される魔法のようなものでもないです.



さて,今回のシャッフルディスカッションを見て気になったことがあったので,それをここに記しておこうと思います.これは授業のあとにぐったりしているグループにはアドバイスとして意見を話ししたことと本質的には同じことなので,もしここを見ているならあの時の話と合わせて参考にしてもらえれば.



いちばんに気になったのは,目的と手段が曖昧だったことです.みなさんは学習支援となるような副教材というコンテンツを作る.コンテンツには工夫や仕掛け・仕組みといったものが必要となるので,そこをきちんと設計することはとても重要です.ですが,みなさんのゴールは仕掛けや仕組みを作ることではないです.それが何をどう理解する助けになってという所がきちんと整理されていないままコンテンツと名付けられたギミックだけが提示されている,そんな印象をちらほらと受けました.コンテンツとは内容を指し(今Wikipediaを覗いてみたら,情報内容という表現もあるみたいですね),シャッフルディスカッションで強調されがちだったギミックはむしろメディア/媒体に近いのではないかと思います.


これに関連して,ユーザである小学生の利用と学習と理解のプロセスをもうちょっと議論して欲しかったというのもあります.今回のシャッフルディスカッションではセンサーのこととモデルのこととActionScriptなどの処理のことに意識が向き過ぎていて,それと小学生がどのように対峙するのかどのように学習と理解を誘導していくのかという部分がイメージしにくかった印象でした.ただそこに物と人があるだけでは理想的な結果なんて得られませんので,そこのコミュニケーションをどう誘導していくのかを練っていくことも重要なことだと思います.


ほかには,アイデアの時点で余計なことを制限に入れているのも引っかかりました.センサーでここを作るのは難しそうで,とか,こういうセンサーを使った方が作りやすそうで,とかでアイデアの方向性を決めたり制限したりするのをこの時点でやるのはメリットないです.そもそも,みなさんセンサーをちゃんと使ったこと無いでしょう?その漠然としたイメージで実現性を検討することは,ほとんど意味無いですよ.アイデアは自由に,実装はシビアに.



あとは,これは既に散々手痛い意見をもらっているところには追い打ちになってしまいますが,現象と身体感覚を変なつなげ方するのは受け入れ難いです.例えば力の方向や時間の経過といったものをスケールするのは理解の支援に有効かもしれませんが,向きを変えたり順番をばらばらにしたりするのは決していい手段だとは思えません.無茶な例をすれば,福引のハンドルみたいなのを回して火山を噴火させるとか意味分からないですよね?そういうことにならないように気をつけて欲しいと思います.それならまだマウスでクリックしていた方がマシですから.



最後に,これはまだ仕方ない部分もありますが,話をする人によって内容に誤差がある,誤差が結構大きいことがあるのは今後気をつけて欲しいと思います.もちろん,いいものを作ることが目指すところですが,同時にグループワークですので,グループ内での合意形成も大事にしてください.グループの中で牽引するような立場で振る舞う人や調整する人あるいはタスクを投げられてから存在感を発揮する人などそれぞれの立ち位置はあるかと思いますが,それでも最終的にはメンバー全員で合意形成をすることが大事ですし,自分たちがなにを作ろうとしているのかを全員が理解しているというのは重要であり前提です.グループディスカッションはそういう全員の理解を確認するという意味でも効果がありますし,みなさんが書いているはずの授業blogも同じくそれを相互確認することができるように書かれなくてはならないと思います.


といったように,いくつか僕が話を聞かせてもらった中での気になったことを書いてみました.参考になれば幸いですし,参考にしてないようなのを作ろうと進めてたら,少なくとも僕は難色を示します.

みんなが頑張るといい写真が多く撮れ,取捨選択が難しくなりますね!写真が多くて縦に長いですが,これでも我慢して枚数制限してるんですよね・・うう

2011年10月16日日曜日

CD応用演習2011#03 Gainer workshop

こんばんは,たろぐです.

今回はGainerという仕組みを実習しました.Gainerはブレッドボードを利用することで比較的簡単に回路を組んで,I/Oを実現することができるというモジュールです.これにより期待できることの1つとして,フィジカルコンピューティングが挙げられます.フィジカルコンピューティングとは,人とコンピュータとのやりとり・コミュニケーション・インタラクションを考える領域で,例えばキーボードとマウスに限定しない入力を実現することで,人の自然な振る舞いをコンピュータの操作に結びつけるようなことを目指しています.GainerにはAnalog In,Digital Inが両方ともサポートされているため,さまざまなセンサーを入力に使うことができます.これによりさまざまな状況をセンサーを介して評価し,それをGainerがコンピュータに渡すことで特殊な入力を実現することが可能になるという訳です.


さて,ではこんなことしてまでなぜフィジカルコンピューティングってのを今考えてみようとするのでしょうか.ひとつに,身体感覚ということが挙げられるかと思います.みなさん理科の授業で地層習いましたよね.なので知識はあるかと思います.あるいは,理科の教材が充実していれば図やイラストだけではなくて写真が,しかもカラーで載っていたりするといいですね.でも,先日の地層ワークショップで見て触った実際の土や砂,それらが積もってできた地層はもっとよかったと思います.土や砂は思ったよりサラサラしていたりベトベトしていたりするし,あんな細かいのが積もりに積もってできた地層は自分たちよりもはるかに大きなものでした.そういう,写真やテキストからでは吸い上げられない情報って結構たくさんあると思います.そういう情報の中から,コンピュータによる動的なコンテンツであったりキーボードやマウスではない入力をユーザの身体感覚に近づけることで理解支援に繋げていくことが,フィジカルコンピューティングを活用するということではないでしょうか.

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もちろん,例えば地層の大きさといったスケールを実感するにはフィールドワークが最高の方法だということは間違いありません.砂や土の手触りも本物以上の素材は無いでしょう.ですが,一方でフィールドワークの現場はただ環境があるだけです.そこには説明も体系も用意されていません.環境全体からそれなりの理解体系を築きあげることは不可能ではないですが,それは現実的な時間では無理でしょう.なので,教科書や図版といったものから得られる俯瞰した知識(従来型の学習)と,それを現実の環境や実体験(フィールドワーク)とを繋げられるような仕組みが今回みなさんがデザインするコンテンツに求められているということなのです.これは栗芝先生が初回の授業のスライドで提示してくださっていますね.

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もちろん,環境とのコミュニケーション全てがフィジカルコンピューティングで代用することができるということではないので,どの要素が身体感覚に近づけられるかといった議論が必要になります.また,フィジカルコンピューティングとはGainerを使わなければ実現できないことでもないので,工夫によっては別の手段(より機械的であれより電気的であれ)を検討することもできます.そこはみなさんの作るコンテンツ次第ですね.

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今回はOBの安井先輩が来てくれました.彼もまたフィジカルコンピューティングを入り口にしてコンピュータと人との関わり方を大学で考え続け,素晴らしいことに界隈の業界で仕事を得ている人です.Gainerは彼にとても身近ですし,最新の情報をフォローしているので,彼とコミュニケーションを取ればみなさんの助けになってくれるでしょう.数年前にはSAとしてこの授業手伝ってくれていますし,その前には受講生としてみなさんのように参加してきているので,安井先輩とは長い付き合いですし,長く助けてもらっています.今年もよろしくお願いしますw

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2011年10月6日木曜日

CD応用演習2011#ex

こんにちは,たろぐです.
前回,テンプレートをあれこれ試していたらURL自動生成されていて,今はやめたテンプレートへのリンクを告知してしまいました.改めて,たろぐのURLはhttp://cd-talog.blogspot.com/です.

日曜に生田緑地にて青少年科学館の方に地層ワークショップを開いていていただきました.始まる前にちょっと雨が降ってきちゃってどうなることかと思いましたが,とりあえずなんとか持ちこたえてよかったですね.


さて,如何だったでしょうか?地層ワークショップ.僕自身はかなり興味深く面白い体験ができたと思います.いわゆる泥として認識しているものと地学で定義された泥との違い,粒子の大きさで定義そのものは変わるようですが,実際にはその組成に起因して手触りや色などといった様々な要素が変わっているということにも気づくことが出来たのではないでしょうか.


粒子の細かさという,非常に小さい単位を僕らが目で体感的に確認することは難しいです.なので,例えば顕微鏡で拡大したものを見たり,「xxミリメートル未満」といった知識で補ったりすることが多いのですが,今回のように実際に手で触ると,触感でその差を実感することができたのではないでしょうか?また,地層になっているその場の状況から考えることで,推測できることも多かったと思います.あのワークショップで体験した,現象・状況へのそういったアプローチこそが教科書を読んでいるだけでは触れることのできない学習の形だと思います.


今やっているような理科の現象・状況には因果関係というものが存在します.そこに目を向けるような学習を促すことは,理科に限らず因果関係によって構成されている様々な場面への応用力がつくのではないかと考えています.それは,答えが最初からある問題を解くのとは違います.正解を答えるというのは,銀削りで「当たり」を引くようなあっさりとしたものになりがちですが,因果関係から考えるというのは,状況を把握するところからその理由までを広く深く考察することができます.場合によってはテストの答えのような明確な答えが導き出せないこともありますが,それは地層を実際に見に行って分かるように,長い年月と複雑な事象が絡みあう現実では珍しいことではないと思います.そしてそれは考えるという行為の本質や重要性を少しも損なわないはずです.



といったように,実際に自分を状況に対峙させ,そこにあるもので考えるという行為は非常に有意義で学ぶことが多かったと思いました.残念ながらざっと見た感じ,ただ山の中をだらだら歩いていただけの学生もいたようですが,その質の低い姿勢が半年後を待たずに同じ教室にいる同期に大きな差をつけられてしまうということにもっと危機感を持ってもらいたいなと思います.

このエントリーの最後に.
R.I.P. Steve Jobs
あと,今日は僕の誕生日です☆